ハート・リング通信 2014年

第5回 2014年4月

サクラサクで認知症を演じた 藤竜也さんにインタビュー

ハート・リング運動 専務理事 早田雅美

 「ちょうど震災の年でした。病気が元で、言葉もうまく話せなくなった90歳の私の母を、妻そして娘と息子と一緒に4人で介護しましてね。そんな経験もこの役を演じるにあたって自分を動かす動機の一つだったかもしれません」
 さだまさしさん原作の映画『サクラサク』(4月5日公開)で、認知症の父親「俊太郎」を演じた俳優の藤竜也さんにお話を聴くことができたのは2月末でした。
 雨の中の徘徊、排泄の失敗で自宅の廊下にうずくまる姿など、まさに迫真の演技の数々。
 「自分が自分でなくなってゆくような不安、この先どうなってゆくのかという不安、自分は何者なのかという自問。そんな俊太郎の気持ちを追い続けました」
 役作りを通じて、藤さんが感じ得たことにも興味を持ちました。
 「私の年齢になりますとね、仲間うちでもよくお前は大丈夫か? などと、冗談を言います。しかしですね。生きとし生けるものの定めとして、どうしても次第に肉体は壊れてゆくじゃないですか。それを本人も周りもどう受け止めてゆくかじゃないんでしょうか。俊太郎役を演じて感じたことは、人間の尊厳でした。生きている限り、命ある限り敬意は払われるべきだということ。あとは家族の大切さです。家族というといくらでも甘えられるしなんでも許されるという気がしませんか? そんな家族の中であっても、敬意を失っては良いユニットやチームにはなれないのかもしれませんね」
 藤さんのお話は尽きません。
 「私は今年73歳になります。俳優という仕事柄もあるのでしょうが、それぞれの年代で<旬>があります。今は70歳の旬ということです。人間若いに越したことはないけれども、年をとったら素晴らしくないと考えたことはありません」
 認知症をきっかけに家族が結びつき一つなってゆく心温まる映画『サクラサク』。周囲の変化がもたらすものとは。現在認知症に関わる方にも、将来に不安を感じる方にも、熟練俳優の演技がポジティブな応援歌となっています。

インタビューに答えてくださる藤さん
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藤竜也
俳優。1962年『望郷の海』でデビュー。日活スターとして『野良猫ロックシリーズ』などで活躍。2005年三原光尋監督『村の写真集』で上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞。田中光敏監督作品『サクラサク』の共演は、緒形直人、南果歩、矢野聖人、美山加恋ら。原作・主題歌さだまさし。

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