ハート・リング通信 2014年

第4回 2014年3月

家族の向き合い方 大きな分かれ道

ハート・リング運動 専務理事 早田雅美

 俳優の藤竜也さん演じるお父さんの記憶が次第に失われるという由々しき事態の中、そのことをきっかけに、ばらばらだった家族が一つにまとまっていくという温かい映画が、この春ロードショー公開されます。さだまさしさんの原作は、さださんの父との思い出を下敷きに書かれたものだそうです。きっとお父さんの認知症と上手に向き合ったのでしょう。
 一方で、認知症のご家族の介護が原因で不幸な結果に結びついてしまう、そんなつらいニュースに接することも少なくありません。
 私自身、10年以上前のことですが、父がアルツハイマー型認知症という診断を受けてからの数年間は、父のできないことや失敗ばかりが目に留まり、溜息と失望の中で大きなストレスを感じていました。
 千葉県に住むKさんは、認知症で普段の生活の中で戸惑いを見せ始めた83歳のお母さんを「何しているの!」と叱り続けた過去を悔いていると言います。
 義父が認知症と診断されたM子さんは、義父の住む夫の実家を訪れるたび、物忘れや失敗ばかりの義父に「きつい言葉」を浴びせ続ける家族の様子にいつも心が痛むと話しています。
 「認知症のわけがない」、「しっかりしてほしい」、大切な家族だからこそ誰しも感じるこの気持ちが、認知症の早期発見を遠ざけ、状況を悪化させてしまうこともあるのです。
 ハート・リング運動代表理事の小阪憲司医師は言います。
 「ご家族が、認知症のイメージや未来への不安に脅えるばかりに、かえってご本人に過重なストレスを与え、認知症を進行させてしまったり、症状を悪化させてしまったりするケースも少なくありません」
 難しいことですが、大切な家族だからこそ、正しい状況の認識や知識をベースに、一番不安なはずのご本人の立場で支えてあげたいものです。
 冒頭にご紹介した映画『サクラサク』は、「認知症にやさしい社会を」というハート・リング運動の目標を、映画スタッフの皆さんと共有できたことから、相互に協力させていただくことになりました。家族の戸惑いとつながりを描いた心にしみ通る素晴らしい映画となっています。

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