ハート・リング通信 2013年
第1回 2013年11月
「葉っぱの町」で見た 元気支える生き甲斐
ハート・リング運動 専務理事 早田雅美
高齢化率がなんと約50%に達しながら、元気なおじいちゃんおばあちゃんの町として全国的にも有名な徳島県上勝町。私たちハート・リング運動では、世界アルツハイマーデーの9月21日、同町で行われた音楽ライブを応援して、集まった町民の皆さんに正しく認知症を知ってもらう啓発活動を行いました。
町は「葉っぱビジネス」で有名です。30年ほど前、町民の多くを占めるお年寄りが活躍できるビジネスはないかと模索した答えが、日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜など“つまもの”を販売することでした。以来町ぐるみの事業として発展し、今では約200軒の農家さんが毎日この仕事に従事しています。
76歳になる西蔭幸代さんもその一人。毎日パソコンやタブレットでその日の注文を確認しながら、栗や南天の葉などを次々に採り、出荷してゆきます。「夢を持てるから」「100歳までも頑張ってみせる」と笑顔です。
町内唯一の診療所の医師である木下英孝さんは語ります。
「特養の入所者の方などを見ていると、近年重い認知症の方も増えていることは事実ですが、他の地域と比べて葉っぱの仕事や第一次産業を続けている上勝町のお年寄りが明るくお元気であるという印象は持っています。脳卒中の後遺症の方や、軽度な認知障害がみられる方でも、ここでは皆さんが生き甲斐を感じて日々を過ごしています。頭を使い指先を使い、五感を刺激することも重要です。生活習慣が影響していると感じる認知症の方は少なくありません。安易に薬に頼るのではなく、可能な範囲で頭も体も使うよう生活改善をお勧めしています」
高齢者を将棋の駒や社会のお荷物のように扱うのではなく、個人の生き甲斐と夢を軸に計画されている町づくり。それが、遠く都会の若者も魅了して、生活体験の希望者が後を絶たないとか。
ライブイベントは、75歳以上入場無料の特典も好評で、ブルームーンカルテットのメンバーによって昔懐かしい名曲がジャズ風に奏でられ、古民家を使った山あいのカフェは熱気にあふれていました。
ブルームーンカルテットメンバーとスタッフ
西蔭幸代さんと「元気なお年寄りたちを見たかった」と滞在している千葉県の大学生佐藤さん
「薬より生活改善を勧める」という木下医師