ハート・リング通信 2015

第15回 2015年3月

さくらちゃんに見る地域包括ケアの真心

ハート・リング運動 専務理事 早田雅美

 兵庫県西宮市の「つどい場さくらちゃん」で、理事長の丸尾多重子さんは、この日も調理場で、おぼろ豆腐や肉じゃがなど真心いっぱいの家庭料理を作りながら、訪れた人の相談に耳を傾けていました。今日の相談者は、地元の社会福祉協議会のスタッフや看護師、元自治体職員などです。

 丸尾さん提唱の「まじくる介護」は、同じ地域に住む介護をする人、介護を受ける人、介護を仕事として関わる人たちなどが、お昼ご飯を一緒に突っつきながら、一切の垣根やタブーや立場を超えて、悩みや相談をお互いに吐露しあいぶつけ合うことで、「人と人がまじくり、育て合い」ココだけにしかない生きた情報交換をします。

 明るく人間愛にあふれ、そのうえ歯に衣を着せない丸尾さんを慕って、またその噂を聞いて遠方から訪れる人も後を絶ちません。利用料500円、お昼代500円の参加費で、地元西宮市だけでなく、介護に悩む人はもちろん医療関係者や介護福祉関係者が駆け込む場所となっています。

 この日ご一緒した有岡さんも、「さくらちゃんがあったから母の介護ができた」という1人。今年1月3日に「さくらちゃん」で亡くなった「おかあちゃん」と「送る会」までの5日間、丸尾さんと川の字に添い寝をしたというお話もうかがえました。

 丸尾さんが「さくらちゃん」をスタートさせたのは2004年。元々フードコーディネーターとして活躍していましたが、ご両親の介護やお兄様まで看送った後に、受けたヘルパー1級の実習でとんでもない場面に遭遇します。

 「大型施設の機械入浴で、嫌がるお年寄りにまるで魚を洗うようにホースでお湯を浴びせるのです。こんなことを人にしてよいのか! と思いました」

 以来、介護保険制度をあえて使わない自由な立場で、人として当たり前の心を第一に、人と人が「まじくる」場を守り続けてきたのです。昨年2月には長尾和宏医師との共著で『ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで』(ブックマン社刊)を出版。ご本人は「間もなく発禁」と冗談混じりながら、まだ歩ける人を閉じ込める→寝たきり→オムツ→食べれられなくなる→ボケる……という施設も実在する事実に警鐘を鳴らす書と言えます。

 「地域包括ケア」って最近よく聞くけれど、どんな意味だっけ!? そんな方は、インターネットや辞書で調べる前に、地域包括ケアが本来めざしている心を、さくらちゃんに体験しに行かれるのはいかがでしょうか。

丸尾多重子さん(右から4人目)を囲んで
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