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ハート・リング通信 2015年

第22回 2015年10

認知症も、まずはかかりつけ医に

大分県由布市のオレンジドクター、佐藤慎二郎医師

 「昔から認知症は精神科が扱ってきました。でも、大分でも大学病院の認知症外来は診察まで4カ月待ちでしたし、高齢な患者さんは同時に多くの疾患を抱えています。ご本人の環境や家族関係などを熟知した私たちかかりつけ医の役割が大きいはずだと確信していました」
 こう話すのは、湯布院温泉に近い大分県由布市で、開業医を中心とする医師、看護師、介護職の地域連携「由布物忘れネットワーク」の代表世話人を務める内科開業医の佐藤慎二郎医師です。大分県では、認知症の早期発見推進を図る
ため、認知症医療の研修を修了した医師を「大分オレンジドクター」として登録しています。
 そんな佐藤医師も、「元々は、知識不足から認知症の患者さんに充分な対応ができていませんでした」と自戒を込めて振り返ります。アルツハイマー型認知症だった自身の祖父にアドバイスできないという経験もあったそうですが、地域医師会の理事に就任し、かかりつけ医としての研究テーマに認知症を提案、その企画や推進を任されたことが転機となりました。
 自分たちがスキルアップして、地域住民の健康と命を守ろうという呼びかけに反対する開業医はいなかったそうです。認知症外来の専門医からも「そういうことなら全力で協力する」という申し出をもらいました。
 ただ最初は医師だけの研修会としてスタートしたため、「かかりつけ医が認知症も診る」ことは知られておらず、ケアマネジャーが患者を勝手に大学病院の専門医へ連れて行ってしまうこともありました。そこで、ケアマネジャーなどの介護職にも研究会への参加を呼びかけ、取り組みを知らせました。今では認知症も、まずはかかりつけ医に相談してくれるようになったそうです。
 同ネットワークでは、医療介護の専門職が参加する症例事例検討会を開き、連携ツールや用語集、パンフレットを制作し、さらに今では市民参加の徘徊模擬訓練まで行っています。
 「由布物忘れネットワークは、 年前に遡る災害やインフルエンザに備えたトリアージ模擬訓練の成果でもあるのです。全国どの地域でも、災害に備えた開業医の連携から発展させれば、同じような結束が得られるのではないでしょうか」と話します。
 佐藤医師は、「俺はどこにも行かん。いつもここにいる」と、患者さんに常々話しているとか。
 認知症の不安を持つご家族にとって、かかりつけ医からかけてもらう、この言葉は最良のクスリに違いないと感じました。

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