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ハート・リング通信 2014年

第12回 2014年11月

歌で認知症を応援します! シンポジウムでプレゼント

ハート・リング運動 専務理事 早田雅美

 多く方にお越しいただいたハート・リング運動主催のシンポジウム『食べることは生きること』の最後に、ソプラノ歌手の湯浅桃子さんが「アヴェ・マリア」と「てぃんさぐの花」の2曲をプレゼントしてくださいました。
 東京藝術大学大学院出身の湯浅さんは、全日本学生音楽コンクール声楽部門で第1位になった後、文化庁の派遣でボストンに留学。帰国後国内の様々な賞を受賞して活躍中です。今月には『チャールダーシュの女王』(二期会/日生劇場)にシュターズィ役でもご出演ということです。
 「私が住んでいる武蔵野市には日本フィル武蔵野の会という鑑賞団体があって、大きな音楽ホールに来れない高齢の皆さんのために、介護施設や近くのホール、お寺などに演奏家を招いて音楽を楽しんでいただくという活動をされています。私も何度か参加させていただいているのですが、その都度思うことは音楽の持つチカラです。その場にいるみんなを結び付けてくれたり、癒しや楽しみを与えてくれます」
 「実は90歳になる私の祖母も認知症なんです。幸い祖母はまだ自炊などもできて、元気な方だと思います。祖母を見ていて思うのですが、たとえ認知症になってもみんなに優しい祖母であることに変わりはなく、私の歌を聞いて喜んでくれることも昔のままです。祖母と同じ認知症に悩んでいる方やそのご家族を私の歌で応援したいと考えて参加させていだきました」
 「てぃんさぐの花」は、日本を代表する作詞家の鮎川めぐみさんが沖縄民謡に詞をつけた曲でした。鮎川さんは、スタート時点から私たちの活動を応援してくださっている方でもあります。鮎川さんの人間愛や優しさの詰まった歌詞が湯浅さんの美声に乗って舞い、会場では多くの方が、湯浅さんの華やかな姿に魅了されながら、うっとりと浸っていました。
 「認知症のお年よりの前で歌っても、どうせすぐ忘れてしまうだろうという人もいます。でも私は今を楽しむということが、認知症のある方にとって大切なのだと思っています。大切な人生の1ページを毎日過ごすなかで、その瞬間、その日一日が少しでも楽しく充実して過ごせれば素敵だなぁと……」。おじいちゃん子、おばあちゃん子だったとも言う湯浅さんの言葉には、認知症であろうとなかろうと人を慈しむ温かい心がにじんでいました。認知症への理解と思いやりを伝えるハート・リング運動に、湯浅さんは今後も歌でお力添えくださるということでした。

湯浅桃子
東京藝術大学および同大学院修了。第55回全日本学生音楽コンクール声楽部門大学・一般の部第1位。第79回日本音楽コンクール声楽部門第3位受賞他、数々の賞を受賞。

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