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ハート・リング通信 2013年

第2回 2013年12月

shall we ダンス!? 無理なく喜びを引き出す

ハート・リング運動 専務理事 早田雅美

 7月に開いたハート・リング運動の設立シンポジウムでは、1人の社交ダンスの先生に登壇していただきました。
 北條俊彦さん、53歳。鎌倉市の社交ダンス教室で多くの生徒さんを教えるかたわら、市の委嘱を受けて高齢者介護予防としてのダンス教室を開催したりもしています。
 全身運動、音楽、相手との共同作業の三拍子そろった社交ダンスは、米国で認知症予防策としても評価されていると聞きますが、北条先生と私が出会ったのは、こんなきっかけでした。
 ある日、重度のレビー小体型認知症の母が、ラジオから流れるタンゴに指先でリズムをとっていることに気づきました。パーキンソン症状で筋肉の固縮が進み、デイサービスでのリズム体操やレクリエーションにも関心を示さない中での小さな出来事。そうだ母は「娘時代に社交ダンスが趣味だった」と言っていた。早速、近所で教室を探しました。
 「きっと昔相当ダンスをされていたのでしょう。ちょっとしたリードで自然に足もついてきますね!」
 こう北條先生は言ってくださり、相当にスローなタンゴやルンバでしたが、話すことすらできなくなっていた母が、時折笑顔を浮かべて踊っていました。この日以来50年ぶりの「趣味」が復活したのでした。
 北條先生は言います。「社交ダンスは高度な技術を要するようにも見えますが、素敵な音楽やリズムに合わせて全身を動かすこと、相互の思いやりを忘れないことがとても大切なんですよ。ご高齢の方にとって一番大切なことは、その方が本当に楽しんでいるかということ。コンディションや体の状態に合わせて、無理なく喜びを引き出せているかという点だと考えています」
 これは、何も社交ダンスに限ったことではありません。その人をよく知り、本当に好きなこと、スピードはゆっくりでも楽しんで打ち込めることを続けさせてあげる周囲の努力が大切と感じました。
 昨年最愛のお母様を亡くされたという北條先生ですが、「年末のパーティーへの出演を目標にしてみましょう」「よければ家内の衣装をお使いください」と、重度認知症の高齢者に夢や目標を次々と示す姿に、介護や福祉が忘れてはいけないハートを感じるのです。

マンガで正しく知ろう認知症!
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